図書室の隅の440のところにいました。これがひだりちゃんです。大沼ひだりちゃんです。ここは町田区立小学校の図書室で最も人気のない場所、4類の本が置いてあるところです。いつの時代に書かれたのかわからない、おばあちゃんの皮膚のような肌触りの装丁をした本が互いを押しあい身を捩るようにして本棚の中に埋まっています。ちょうど窓を、隣の3類の本棚が邪魔をして、光は一切入ってきません。乾いた紙と上履きの匂い、そしてちらちらと深海に漂うプランクトンのような埃の匂いがこの空間を覆っています。
リーンゴーンガーンゴーン。チャイムが鳴ったので目を開けることにしました。ひだりちゃんは胸に抱えていた本を、入り口の貸し出し機にスライドさせました。名札をガラス面にかざすと、13817007という文字が(これはひだりちゃんの学籍番号です。1というのはひだりちゃんが生徒であるという分類のナンバーです。38というのはひだりちゃんがこの町田区立小学校に入学した年を示し、17というのは町田区立小学校のナンバーです。町田区の中の17番目の小学校ということです。そして、007というのはひだりちゃんが小学5年生の中のあいうえお順の7番目ということです。)ピッという大きな音と共に表示されました。ひだりちゃんはこの音が嫌いです。
教室に着きました。もうすでに授業は始まっていました。でも国語の授業だったので正直興味はありませんでした。教室の扉をあけると、またピッという大きな音がなって、「13817007、14分遅れて出席」と表示されました。すると後ろから思いっきり背中を押されました。体の中身が外側をやぶって出てくるような衝撃です。でも出てきませんでした。振り返ると鮮烈なピンク色の髪を、ドリルのように捻って二つに束ねている子がいました。それはストロンチウムの炎色反応のように鮮やかでした。