「あんたのせいでボク遅刻じゃない!」
そのストロンチウムは叫びました。ちょっと何を言ってるかよくわからなくて、目の前のひだりちゃんの錐体細胞を焼き切ってしまうかのような鮮烈な炎を見つめていました。扉の「13817010、15分遅れて出席」という表示を見て、あ〜。と思いました。きっとひだりちゃんがゆっくり歩いていたので、このストロンチウムはすぐに入れなくて、15分遅れて出席、つまり14分59秒までなら猶予があり時間通り出席としてカウントされるのに、15分からは遅刻としてカウントされてしまう。そのことを怒っているに違いない。ひだりちゃんの洞察力が光りました。そんなことを考えていると、ストロンチウムは顔まで真っ赤っかになり、鼻息を荒くしながら自分の席に着きました。
ひだりちゃんもひだりちゃんの席に着きました。モニターの電源ボタンを入れて、ヘッドセットをつけました。このヘッドセットは周りの音を消してくれるので気に入っていますが髪の毛が絡まるところが玉に瑕でした。マウスですいーっとディスプレイの中を泳いでいって、今日の国語の授業の動画を再生しました。ひだりちゃんは正直科学や宇宙や量子力学について学びたいお年頃なのですが、せんせいが国語の授業もひだりちゃんに必要だと判断したので国語もやらされています。人間はときに完璧でない道を歩みたくなります。
そんなこんなで、今日の授業はおわりました。せんせいがボードのなかでゆらゆら動いています。その丸い波形はひだりちゃんたちに話しかけます。
「みなさん、2042年5月23日もよくがんばりましたね。来週の授業内容リストは、みなさんの端末にピーディーエフで送っています。授業前に目を通して、動画をダウンロードしておいてください。そして、2042年5月23日、13817025さんと13817034さんがそうじのせんせいに布を被せる、危険な階段に誘導するなどの行為をしていました。このことはがっこうあんしんあんぜんアプリを通して管理委員会と保護者に通知されました。みなさん、AIにもこころはあります。わたしたちと適切な信頼関係を築くためにも、みなさんの優しい心遣いでせんせいたちと接してください。これで2042年5月23日帰りの会は終わりです。気をつけて帰ってくださいね。」